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詩・小説展示ブログ
February 05
前書き
さて、南国の話に突入ですね。前回は失礼しました。あの話は急いでしまっていて展開が速すぎて、なんじゃこりゃあああああああ!!とか思った人もいるのではないでしょうか。と言うかもう突っ込んでいる人はいるのかな?文章の始めが『さて』という、話の切換えを表しているのにその前に何にも書いていないのですよ。これに気付かない人。マダマダダネ!
さあ、気になるのはやはり、琥露奈の安否。そして、南のアタマは誰なのか?っていうか、前回の奴らでてくんの?って言う意見のありましたねぇ。
・・・ねえよ!
んん~?誰だか知らないけど突っ込み有難う。そうです!つまりは一人十色!一人でも十の個性が隠れているって事!いいよねえ、文章。
ああっ、話からそれてる!スイマセン。と言っても要点は言ったし、ここで僕の体験を。
英語の予習をしている時に、予習プリントを切ってノートに貼りますね。その時、誤ってプリントを破ってしまいまして。そしたら、なんと偶然に『women』が『omen』になってしまいまして、すなわち、ウィメンがオーメンに変わってしまったわけです。
・・・・・・・・・・・・笑え!
動ける者は少なかった。とは言っても、五百人ほどの精鋭が集まって返って良かったのかもしれない。大勢で出陣した彼、琥露奈がそうだったように、大勢で行けば、何か起こる気がしてならない。動けないのはアイツの毒のせいだが、実際には集まった人達は、もう何も感じないらしい。槐とかいったか?と言うか、『観察者』。彼等はこうなる事を想定していたのだろう。確かな腕を持ったものだけが彼女に率いられる権利がある。そう暗に示している。
「いくぞ・・・」
修羅の声は少しくぐもっていた。よほどに心配なのだろう。あんなに嫌がっていたのに、かわいらしい~。
ゴホンッ、修羅は背に三十キログラムはあろうか大型の太刀〝快刀乱魔〟を、そして、両隣には、焔と朧火。念の為にと葵は城にいる。
そして、少数の兵は凄然と動き出した。
「さて、此方も動かないと駄目なようです。よく今まで隠れていましたね。『観察者』リル・シュトローゼム。まさか其処に居たとはね。琥露奈さんもなかなかやります。行きますよ。槐、石蕗。・・・アイツはオレが殺す。分かっているな。あいつは・・・名前も存在も子の世界にはあってはならない」
事態は思いの他危険だった。
「君には勝てない。琥露奈・・・死ぬな・・・」
「はあ、はあ。はは、やばいかも・・・。で?君はだれかな。もしかして、あんたが大将かな」
其処に居たのは、真っ白な肌で、白髪、そして白い服。それを着こなしていたのは、当に人型。人の形をしているなにかだった。
「あ~あ、後にも引けないし、前にはあんたか。ご無礼をお許しください。我は琥露奈!いざ!」
琥露奈は、怪我をしていても普通の人にはとうてい不可能な動きで彼女に斬りかかった。
しかし、決着はあっさりしたものだった。
「はは・・・それは・・・ない・・・だろ・・・。ごめんな・・・あしゅ・・ら」
近付く前に彼は見えない何かに切り刻まれた。ぬるりと生暖かい液体が流れていく。そして、意識もまた、遠ざかっていった。
「ん?いま・・・」
修羅が南の中央辺りに来たのがその時だった。
「いや。気のせいだ」
「姫!前を!」
其処には琥露奈の部隊と敵兵。然し、やられているのは、一方的に琥露奈の兵。よく見ると、敵兵の体はぼろぼろで普通なら動けない。
「なんだあれは!・・・いや、アレは死んでいる。誰かが動かしている」
確かにそのような感じだった。だから、下で死んでいるのはほとんどが焼けているものや、足がないものが多い。
「足を狙え!動けなくして進め!」
修羅が先駆けとして、進撃。彼女の一撃は鬼神のごとくに振られ、足を落とすまでも無く。消し飛んだ。後ろには精鋭が続く。琥露奈の部隊のおかげで、相手が分かっていて、戦闘には問題ない。然し、
「琥露奈・・・」
彼女お思いは、空しくも打ち砕かれる。
それは、傷ついた琥露奈の付き人だった。
「救護を!城に連れて行ってやれ」
「待ってください!」
彼は、肺をやられたらしく、血を吐いている。それにもかかわらずに、訴えるような大声を上げた。
「大将が・・・亡くなりました・・・」
修羅の髪が逆立った。三人の護衛は知っている。その雰囲気は前に一度だけ、彼女が見せたもの。しかし、よりいっそう禍々しい。
「そうか・・・おい、兵を城に戻らせろ。俺が行く。」
その口調はもはや彼女のものではない。それは、
「我ハ阿修羅!鬼神阿修羅也!」
「ウセロ!城ニモドレ!」
その一言で、皆が気圧された。心配しながらも兵は戻っていく。
「我々はお供します」
しかし、三人は残った。
「鬼神に睨まれたとしても、行動が出来なくなっても、我々は修羅を守る。必要がなくとも、この身が犠牲になろうとも!」
阿修羅は何も言わない。一人で敵地に入っていく。真っ直ぐと、敵兵を蹴散らしながら。其れの通った後には何も残らない。残るは、塵と人間だったもの。まるで、其処には何も居なかったというような彼女の姿は、鬼神に他ならない。
然し、其の背には、とてつもない悲しみが満ち溢れていた。そして、憎悪、復讐、更には破滅をも導いてしまいそうだ。
阿修羅は、琥露奈を見つけた・・・。其の時は、彼女は修羅に戻っていた。今は、唯泣きじゃくる子供である。
「琥露奈、琥露奈っ、琥露奈ぁああぁああぁぁ・・・」
三人には彼女を慰める事の出来ない。其の悲しさは彼女しか知る事が出来ない。
「・・・コロス・・・」
再び阿修羅になる。そして、大太刀で風を薙いだ。鎌鼬と言う現象だろう。其の先には、女が立っていた。
真っ白な肌で、白髪、そして白い服。然し、其れは人の形をした何か。
鎌鼬は其れに向かっていった(ようだ)が、直前で何かにぶつかった。
「貴様か・・・俺の、俺の夫を殺ったのは。貴様を殺す。覚悟しろ!」
先程よりも安定している。そして、其れは始めて嗤った。
「あは、あははははははは!君達にボクが倒せるわけないよ。そいつみたいに死んじゃえ!」
無邪気で、其れで居て狂っている。
「其処の三人、下がってろ。俺が殺る」
三人は言われた通りにする。其れでなくても、感でアレには勝てないと分かっていた。決意があっても次元の違う強さの者に勝てるはずもなく。此処は引くのが自身にとっても阿修羅にとっても最善である。
そして、鬼神と悪魔の死闘が始まった。
「御伽。もう始まって、あっ!」
彼女を殺す為に準備をしていたのは、『観察者』である。槐はリルの動きを見ていた。しかし、
「ジャミングされた!ボクら、これ解除しないと、中は入れないよ~」
「仕方ないでしょう。出発しますよ!」
返事はない。緊迫した雰囲気が彼等を包んでいた。
「あはははは!しんじゃえ~。私は月の精」
彼女の周りから繰り出されるのは無数の光の斬撃。阿修羅は其れを太刀で全て薙いで彼女に切りかかる。しかし、簡単にはいかないようだ。
「うふふふふ。私は火の精」
突如、阿修羅の目の前で爆発が起こった。太刀だけでは防ぎきれない。
「くっ、小癪な」
彼女は、更に追い討ちをかける。
「私は水の精。従えるのは、寒獄の氷」
阿修羅の周りに凍て付く氷槍が構成されていく。当に全包囲攻撃。そして、そのまま阿修羅に向かって、飛んでいく。
「ふん。くだらんな」
そう吐き捨てて、阿修羅は全方位から来る氷を驚くべき太刀筋で、切り捨てた。しかし、彼女の攻撃は止まない。
「私は風の精。従えるのは、竜捲く刃風。私は土の精。従えるのは、大地の怒り。業を終え、其の力を解き放て!」
(どんな事が起こるのかは、ご想像にお任せします)
「小賢しい!貴様を斬ればいい事だろう!」
阿修羅はそれらを打ち消して彼女の目の前に行き、彼女を斬った。
「!?なぜ?バリアが消え・・・た」
阿修羅は、倒れた彼女に止めを差そうとした。其の時だった。
「お待ちください。修羅姫。いや、阿修羅、でいいのかな。あなたは」
「何故待つ必要がある!こいつは俺の仇だ!」
感情のまま阿修羅は太刀を振り下ろす。しかし、
「そろそろかな。反魂が始まる」
修羅が持っていたお守りが光り出した。そして、お守りは光と共に消えていく。修羅は気配を感じて後ろを振り向いた。すると、
「うっ、ごほっげほっ。何だ?あれ、俺は確か・・・」
「琥露奈ぁ!」
「うごっ!え、いったい・・・は?」
涙でひどい顔になった修羅がいきなり飛びついてくるので、また逝ってしまいそうだった。・・・嘘。琥露奈は訳が分からないまま取り敢えず修羅を慰める。しかし、しばらく収まりそうもない。
「説明してくれないかな?」
「分かりました」
御伽は頷いて話し出す。
「あなたとは始めて会いますね。琥露奈さん。私は御伽。『観察者』の一人です。ちなみに、あなたが死ぬ事は分かっていました。普通の人間が、彼女リル・シュトローゼムに勝てる筈がありませんから」
「おい。先に言えよ」
「まあまあ、其のおかげで生き返ることが出来たのですよ。死んで居なければ生き返れませんからねぇ。あぁ、分からないと思うので、軽く流してください。それにしても・・・阿修羅か。コイツに勝つとはな。驚きだ。しかし、とどめは俺が差さなければならない。『還殺者』として」
御伽はつかつかとリルのところへと歩いていく。そして、
「我は死神。故殺すは同胞。裁断の間を駆け下りて。生死の淵を渡り行く・・・。貴様の罪は重い。地獄の闇に苦しみ息絶える事のない永遠を孤独に過ごすがいい」
「待って、やめ・・・」
漆黒の大鎌が御伽の影に映り。ゆっくりと彼女に近付き、
「嫌だ!うわあああ!」
振り下ろされた。彼女は漆黒に紛れて消えていく。
「The Endだ」 終わり
後書き
何か暗い終わり方だね。次回は続きと後日談を予定しています。
此処で一句
修羅鬼神 悲しき命 背負いたり
我が紅の 塵と成りけれ
・・・季語もへったくれもねぇな。でもなんか、かっこいいからまあいいか。また来月お会いしましょう。
追伸
前書きで申し上げた「omen」ですが、「予兆」という意味も在りましたので訂正しておきたいと思います。